ノックです。
皆さんは、リスニング問題などで「 can」と「 can’t」の聞き分けに困ったことがありませんか?
「t」は子音の中でも日本人にとっては非常に聞き逃しやすいこともあり、この「can」と「can’t」の聞き分けに関する問題が出てきたら、日本人は間違えやすいです。
しかも、復習しようとリスニング音源を何度も耳を澄まして聞いてみても、「can’t」がどうしても「can」としてしか聞こえない…といった事態が発生することも少なくありません。
それもそのはず、ネイティブは「 t」をそれほどハッキリ発音しないのです。ネイティブはお互いのコミュニケーションでは、「t」をしっかりと聞き取りながら肯定文なのか否定文なのかを判断しているのではなく、むしろその 文脈の流れからくる文脈やイントネーションを聞き取って判断しているのです。
つまりどういうことかというと…以下に説明していきます!
canとcan’tの聞き分け方
今回は、実践的に音を聞きながら判断していった方が良いので、ネイティブの先生のシル先生による ユーチューブ動画を参考にして解説していきます。
こちらの動画は、「can」と「can’t」の聞き分け方をテーマに英語で解説してくれている動画です。
こちらの先生の主張を、日本人としてのコメントも交えて解説していきますので、まるまる英語の解説だと分からないという方は、解説を一読してから動画をチェックしてみましょう。
https://www.youtube.com/watch?v=bmm5F_o4c0w
まず皆さんが知っておかなければならないのは、単体で発音する「can」・「can’t」と、文章中で出てくる「 can」・「 can’t」とは発音が違うということ。
学校で習うときには、以下のように習いますよね。
【音源】can
【音源】can’t
単体で発音するときは、しっかり子音の「 t」が発音されていて、分かりやすいですよね。
しかし文章中に出てくる「can’t」は、「t」が ハッキリ発音されないのです。
というか、「 t」そのものの発音は 全くない場合も少なくありません。
この動画の前半部分で紹介されているのが、
A:
Can you speak English?(英語を喋れますか?)
B: No, but I can speak French.(いいえ、でもフランス語は喋れます。)
という会話ですが、この文章をシルさんが読み上げる時、文章中に出てくるふたつの「 can」が、発音が違って聞こえるのに気づいたでしょうか?
最初の「can」は、私たちが学校で習う「 can」に近いハッキリした発音ですね。
【音源】can
対して二番目に出てくる「can」は、文章の途中で出てきています。
こちらの発音は、上のものよりも 少し弱い「kn」という音ですね。途中の母音が脱落しています。
【音源】
短く弱い、そして 大きな音にはなりません。
さて、次の文章なのですが、
A:
I can’t believe it!(信じられないよ!)
B: I can’t either!(俺も信じられない!)
C: I can!(僕は信じられるよ!)
この文章中では、A、B、Cのセリフの中の「 can」および「 can’t」の発音全てが「 キャン」と聞こえます。つまり、「t」の音は脱落しています。
シルさんの解説中に、ここで発音する「can’t」の「t」は
と表現しているくらいです。
「えっ、では、どうやって聞き取ればいいの!どっちもキャンという発音じゃ、肯定文か否定文か分からないじゃないか!」という声が聞こえますね。
シルさんが説明しているネイティブの「t」の発音の仕方は、
「普通の『t』のように、 歯の裏に舌をくっつけないんだ。その代わり、 のどの奥で息を止めている。『 canっ』のようにね。」
そう、「 canっ」です。
このように、「t」が脱落するのは「can’t」の後に語句が続く場合だそう。つまり、
【音源】I can’t.
というように、 「can’t」で文章が終わる時には、きちんと「t」を 発音するんです。
例えば、
【音源】I can’t play soccer.
というように、「can’t」の後に語句が続く場合は、「t」の音は 非常に弱くなります。
次にこちらのYouTube動画を見てみましょう。
https://www.youtube.com/watch?v=8mRUtGYMUhc
ここでも同じように、文章中の「can’t」はぐっと息を止めて音の流れが切れるというように説明されていますね。
ここで大橋先生がアドバイスとして言うことには、
「 自分がこれを発音するようになると、聞き分けられる」ということ。
つまり自分がこれを発音できるようになれば、楽に聞き分けることができるというのです。
ですので、回り道のような気がしても、「can」や「can’t」の違いを身に覚えさせるために、リスニング音源の リピート練習などで対応するのも一つの案でしょう。
音の強弱で聞き取る方法
最初に紹介されたこちらの文章。
A:
Can you speak English?(英語を喋れますか?)
B: No, but I can speak French.(いいえ、でもフランス語は喋れます。)
AとBでは発音が違うことに触れましたね。Bのほうが 弱い音になっています。
なぜこのように音の違いが出るかというと(ここからはノックの見解ですが)、2番目の「can’t」に関しては文章中でそれほど重要ではないからです。
一番最初に聞くときに「can」をすでに使っているので、「 No」と打ち消してその時点で「英語を喋ることはできない」という情報は伝わっています。「but」以下に関しては単なる 付加情報。話し手がただ付け足したいから付け足すわけで、聞かれていることに答えているわけではありません。
しかも、2番目に出てくる「can’t」が弱く発音されても、最初に聞くときに「can」を使っていますから、そこにいるのは「can’t」であると 大体検討が付きますね。
英語は基本的に読むときに重要な情報を強く読み、重要でない情報は弱く読むことによって、 流れるリズムを作りだしているので、「can’t」は弱く短く片付けているということになります。
Bが話す内容「No, but I can speak French.」の中でいうと、「can’t」より「 French」のほうが重要ですからね。(この文章の意図になっているのが「英語」でなく「フランス語」を喋れるということであるから。)
ですので逆に取って考えると、「can」と「can’t」を聞き分けるために、 音の強弱をヒントとすることができるということですね。
文脈で聞き取る方法
また、色々な見解がありますが、やはり音よりも重要なのは 文脈でしょう。
例えば、シルさんが紹介した
A:
Can you speak English?(英語を喋れますか?)
B: No, but I can speak French.(いいえ、でもフランス語は喋れます。)
という文章でも、「No,」といった時点でもうその次に「can」ではなく「 can’t」が使われるのかは分かり切っていますね。
逆説で「but」ときて、英語の代わりにフランス語の話をしているというのはもう「喋れる」ことが前提となっているので、本来は聞き分けるまでもないですよね。
さらに、2番目にあげた3人の会話ですが、
A:
I can’t believe it!(信じられないよ!)
B: I can’t either!(俺も信じられない!)
C: I can!(僕は信じられるよ!)
この時Bは「 either」と答えています。
「 either」といった時点で、もうその前に来るのは「can」なのか「can’t」なのか分かるということです。
3人目のコメント「I can.」ももちろん、2人目と同様「信じられない」のであれば「 either」を付けることになりますので、 単体で使っているというのは「can」に決まっていますよね。
このように文脈で考えれば、本来は混乱するまでもないことなんです。
混乱するまでもないといえるのは、文法をある程度勉強して「not」ときたら「either」が来るという ルールを知ってからのことです。だから、「聞き取り」には「 文法力」が非常に大切だとも言えますね。
このように、文脈で「can」なのか「can’t」なのか判断できるのかどうかというのは、英語を語学として聞き取ろうとしているのか、あるいは言語として聞き取ろうとしているのかによります。
日本語こそ、「Yes」なのか「No」なのかハッキリ言わない場合が多いですよね。ですが、私たちは 状況と 前後の文脈を考慮して共通の認識を作っています。
そのように、英語を一つ一つの単語に区切ってハッキリ聞き取ろうとするのではなく、英語そのままの言語として受け止めれば、 会話の流れや前後の文脈から「can」なのか「can’t」なのか瞬時に理解することができるのです。
例えば、休日の夫婦の会話でこのようなものがあったとします。
A:
Can you cook dinner today? I haven’t had your meal for long time.
あなた、今日夕食作ってくれる?あなたの料理、しばらく食べてないわ。
B: Oh, I ○○. I have an appointment to go dinner with my boss tonight.
あぁ、今日は○○。今日はボスと夕食に行く約束をしているんだ。
もし○○の部分に入る( can/can’t)を聞き取れなかったとしても、文脈から分かりますよね。
「夕食を作って」というお願いに対し、今夜はボスと夕食に行く、と言っていますので○○に入る部分は 断りの「can’t」です。
このようにして、大概は文脈の流れが聞き取りのヒントになるのです。
couldとcouldn’t
さて、聞き取りを間違いやすい「can」と「can’t」は触れましたが、「can’t」の過去形である「 could/couldn’t」は聞き取ることができますか?
【音源】could
【音源】couldn’t
「can’t」と比べると、否定の発音に 子音2つ(nt)が付いているので、比較的分かりやすいとは思いますが、これに関しても、上で学んだ「息を止める」という現象を当てはめることができます。
I couldn’t eat much because I was depressed.
私はうつ状態だったからあまり食べれなかった。
【音源】
ここでも、「t」の音が脱落しているのが分かりますか。
その代わり、「n」の後ににちっちゃい「 っ」という音が加わって、そこで息が止まっていますね。
このように、否定の短縮が文章中に登場するときは、もれなく「極限まで弱い音に変換されている」、そして「 息を止めている」という特徴を持っています。
wantとwon’t
そして、こちらも聞き取りにくい音の一つ。
I won’t go to the party.(私はパーティに行きません。)
I want to go to the party.(私はパーティにいきたいです。)
形も文章中に出てくる登場の仕方も、非常に似ているので戸惑いやすい単語ですよね。
【音源】I won’t go to the party.
【音源】I want to go to the party.
発音自体は非常に似ていますが、下の「want」の後には「to」が来ているのでそこで確信をもって聞き分けることができますね、
ですので、先ほどにも書いた通り、「聞き分け」には文脈を読み取る力、そして文法力が非常に大切になってくるということです。
文法も、確信のない浅い知識ではなく、少なくとも基礎的な文法のルールに関しては「これは文法的に正しい、正しくない」と瞬時に理解できるほどの 深い知識が必要です。
例えば、今回のように「want」の後には不定詞のtoが来ると理解している状態であれば瞬時に「ウォントゥー」と聞いた瞬間に「won’t」でなく「want」だと理解することができますし、前回の問題「I can’t either」の時も「either」に関しての 文法的知識さえ整っていれば「can’t」と 瞬時に理解できるのです。
このような深い知識を付けるには、文法書を さらっと読み流したレベルでは身に付きません。文法書を読んで文法に関しての知識をつけ、その付けた知識に関する演習問題で理解を確認して、初めて身につくものです。
英語の勉強は、どこをとっても一筋縄ではいかないものですね。
練習問題
では、以上の内容を参考にして、聞き取り問題をやってみましょう。
「can/can’t」(他want/won’t)の違いに注意して、文脈に注意を払いながら聞き取ったA、Bの会話を描きとってみてください。
さあ、ノートとペンを用意してください。
【音源】
問題1
問題2
問題3
音源の問題は前3種類。どの問題も、AとBの会話によって成り立っています。
聞き取って書きおろしてみよう。

【答え】
(1)
A: Hi, Bob. I checked my schedule, but after all I can’t make it for the meeting next week. Sorry.
やあ、ボブ。スケジュール確認したんだけど、結局来週のミーティングに行けないみたい。ごめんなさい。
B:That’s fine. I can ask Lucy instead.
大丈夫だよ。代わりにルーシーに聞いてみるから。
(2)
A: Can’t you talk more quietly? This is train. You are in a public space.
もう少し静かに喋れないの?ここは電車よ。あなたたちは公共の場にいるのよ。
B: I understand, but you can also tell us that more nicely.
分かりました。でも、あなたももう少し優しく言えますよね。
(3)
A: I want to go to an amusement park in this summer vacation. Can we go mom?
この夏休みに、遊園地に行きたいな。連れてってくれる?ママ。
B: OK. but remember, I won’t take you if you don’t study.
いいよ。でも覚えててね、勉強しなかったら連れていかないからね。
まとめ
いかがでしょうか。ややこしい類似発音にむしゃくしゃしていた方は、これからの勉強の方針がつかめたのではないでしょうか。
英語は何をとっても、基礎の積み重ねが大事です。 英語は言語ですから、深く知れば知るほど、ピュア日本人にとってはどう理解しようのないと思っちゃうような壁にぶち当たるかもしれません。
しかしそれらの壁は、たいてい噛み砕いてみたら、 基礎的な知識と文法が複雑に折り重なっていただけに過ぎないこともよくあります。
ですので、めげずに継続して頑張っていきましょうね!